研究 / Research

アーキテクチャ科学研究系

漆谷 重雄
URUSHIDANI Shigeo
アーキテクチャ科学研究系 教授
学位:工学博士(東京大学)
専門分野:情報通信ネットワーク
研究内容:http://researchmap.jp/urushidani/
学術情報ネットワーク(SINET)とクラウドを活用した産学連携

サイエンスライターによる研究紹介

超高速で超大容量の学術ネットワークのための基盤研究

国立情報学研究所は2007 年4 月から、研究・教育環境を高度化するために、関係機関を結ぶ最新の学術情報ネットワーク、SINET(サイネット)3 を運用しています。私の研究テーマは超高速で超大容量のバックボーンを、高信頼かつ経済的に作るための基盤技術の研究であり、SINET3 の設計・構築にも携わってきました。最新ネットワークのさらに一歩先を行く技術を創出し、定期的に実ネットワークに反映させていくことで、革新的な実用ネットワークの提供につなげていきます。

信頼性や経済性を高めるアーキテクチャーの実現

コンピューター・ネットワークを設計する際、担うべき機能の実現のためにさまざまな要素技術を組み合わせて実装していく過程はアーキテクチャーと言われます。転送先を切り替えるスイッチのアーキテクチャー、システムのアーキテクチャー、そしてネットワーク全体のアーキテクチャーという3 つの観点から、研究にアプローチしています。
学術ネットワークは商用ネットワークに比べて、超大容量のデータをやりとりする必要があるなど、ネットワークに求められる条件が特殊であり、目指すべき方向性も異なります。核融合、地震、天文学...、さまざまな研究用途に先端的なネットワーク機能が求められており、テラバイト(テラは1 兆)単位のデータの転送にも対応しなくてはなりません。また、信頼性や経済性はもちろんのこと、最近は低消費電力といった環境への配慮も求められるようになりました。

意識せずストレスなく使えるインフラを目指して

実用に供したアーキテクチャーの例としては、マルチレイヤーサービスと言われるサービスで、IP ネットワーク、イーサネットワーク、専用線ネットワークの複数の異なった規格のネットワークを1 つの統合ネットワーク上で実現しました。多様な仮想プライベート網(VPN)も、利用者が最適なものを選べるよう、さまざまな規格でこの単一ネットワーク上で提供できます。核融合研究のための大型ヘリカル装置のデータ転送、地震計測データ転送のほか、天文研究のために複数の電波望遠鏡を結合して仮想の巨大望遠鏡を作るためにも用いられています。また、ネットワーク上にバーチャルな研究室を作ることもできます。
また、遠く離れた研究拠点間で必要なときだけ専用線を張れるようにしたいという要求にも応えて、利用者が、接続先、開始・終了時間、帯域などを指定すると、オンデマンドで超大容量かつ高品質の臨時専用線を利用できるようになりました。他のサービスに瞬断などの影響を与えることなく帯域を変更した上で、専用線を張れるというのは世界で初めての技術です。
SINET3 を広く利用してもらい、フィードバックされた意見を基に、さらなる改良に努めていきます。傍ら、より革新的なネットワークを目指した要素技術の研究開発も重ねていきます。実現可能なところを見据えながら研究するというのは難しくもあり、おもしろくもあるところです。
通信ネットワークが、その存在をとくに意識させることなく、ストレスもなく何にでも使えるように自在に変化する、といった世界を目指していきたいと思っています。

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取材・構成 塚﨑朝子

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