NIIについて / About NII

所長の挨拶

kitsuregawa.jpg喜連川 優
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
国立情報学研究所 所長

国立情報学研究所(NII)は日本で唯一の情報学の学術総合研究所として、長期的な視点に立つ基礎研究から社会課題の解決を目指した実践的研究まで、総合的に研究を推進しています。同時に、大学共同利用機関として、学術コミュニティ全体の研究・教育活動に必須となる最先端の学術情報基盤や学術コンテンツ、および、サービスの提供といった事業を展開しています。

その中でも研究と事業を両輪として活動に取り組むNIIにとって重要となるのが、NIIが構築・運用する「学術情報ネットワーク(Science Information NETwork:SINET)」です。SINETは全国の大学や研究所を結ぶ通信ネットワークであり、これまでも日本の学術コミュニティに貢献して参りましたが、2016年から提供を開始した「SINET5」では、日本国内の都道府県全てを100Gbps(ギガビット毎秒)でつなぎ、世界的に見てパワフルなネットワークを構築できました。現在、大学や学術研究機関などの910の機関(2019年3月末時点)がSINETに接続されており、日本の学術コミュニティにとって重要な基盤となっています。

そして、2018年度には、SINET5はさらなる機能強化を達成しました。2018年12月には、モバイル通信環境と直結した新サービス「広域データ収集基盤」の実証実験をスタートしました。これは、閉域モバイル通信環境とSINET5が提供しているVPN(Virtual Private Network)サービスを直結させる試みです。これにより、これまで有線のネットワーク回線では接続できなかった広範囲のエリアや、海上などの遠隔地から貴重な研究データを直接、収集し、安全に保存することが可能になり、「Society 5.0」実現において重要な基盤となるだけでなく、IoTをはじめとして現実世界とサイバー世界をつなぐ新しい研究領域の創造が期待されます。

加えて、2019年3月には、日本(東京)-米国西海岸(ロサンゼルス)-米国東海岸(ニューヨーク)-欧州(アムステルダム)-日本(東京)の経路で地球一周するリング状の100Gbps回線を構築し、また、同時に日本-アジア(シンガポール)回線も100Gbps化しました。この国際回線の増強により、米国や欧州、アジアとの連携研究がより一層深められると同時に、我が国の国際協調・国際競争力がさらに強化されると確信しています。

2017年度に設立した医療ビッグデータ研究センターでは、日本医療研究開発機構(AMED)からの支援を受け、医学系学会と共に、医療画像ビッグデータのクラウド基盤を構築し、医療支援のための画像認識AI技術の開発を推進しています。医療画像は今後ますます大容量化することが予見され、そのデータ収集にSINET5が大きな役割を果たすことは言うまでもありません。

オープンサイエンスの潮流も大きく加速しつつあり、とりわけ、リサーチデータの取り扱いが大きくクローズアップされてきています。内閣府、文部科学省、日本学術会議による検討が一定程度進みましたことから、NIIは検討の段階から実現の段階と判断し、国際連携を推進しつつ、そのテストベッドの構築を進め、既にいくつかの研究機関と実証実験を開始しました。学術分野は多岐にわたるため、まだ手探り状態ではありますが、まさに「データの時代」となる中で、いち早くそのシステム構築に取り組みたいと考えております。

ネットワークが浸透する中での最大の課題はセキュリティであることは言うまでもありません。NIIでは、2017年度より大学連携に基づく情報セキュリティ体制の基盤構築事業を通し、徐々にその有効性が明らかになってきています。アタックは絶え間なく発生するため、その対応は極めて迅速に行わねばならず、今後も大学と連携して種々改良を重ねてゆく所存です。

NIIでは産学連携の取り組みにも力を入れています。2016年に三井住友アセットマネジメント株式会社のご支援で「金融スマートデータ研究センター」を、2018年度にはLINE株式会社と「ロバストインテリジェンス・ソーシャルテクノロジー研究センター」を設立しました。今後一層産学連携を推進し、AIの新たなステージにおいて、企業と共に多様なソリューションの研究・開発に取り組む所存です。

NIIはSINETのような事業と共に、情報学の基礎研究や社会の発展に貢献できるような社会実装を目指した実践的研究も同時に行う、世界的に見ても稀有な機関です。「by IT」はもちろん重要ですが、「of IT」としてのITそのものの基礎研究とのバランスをとりながら機動的な研究体制を強固なものとしていきたいと考えています。

2017年度には、蓮尾一郎准教授が科学技術振興機構(JST)のERATOプロジェクトを推進する中でシステム設計数理国際研究センターを設け、ソフトウェアの基礎研究をNIIとして支援することとしました。基礎研究を重要視する立場は今後も大切にしていきたいと思います。

初心にもどり、「共考共創」(一緒に考え、皆で創る)の気持ちで一層努力してまいります。

NIIの研究と事業への取り組みをご高覧いただき、種々ご意見を頂戴いたしたく存じます。引き続きご支援のほど何卒宜しくお願い申し上げます。

2019年4月

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