研究 / Research

コンテンツ科学研究系

高須 淳宏
TAKASU Atsuhiro
コンテンツ科学研究系 教授/主幹
学位:1989年 工学博士(東京大学)
専門分野:コンテンツ基盤
研究内容:http://researchmap.jp/takasu/
研究室WEB

サイエンスライターによる研究紹介

実空間とサイバー空間を連携させるための情報処理技術を開発

 私は、さまざまなデータをうまく活用するための「データ工学」という分野で研究をしています。現在この分野には、どのようにデータを蓄積して管理するか、どのようなデータベースを作るかという「データ管理」と、ビッグデータを活用するための「データ分析」の2つの側面があり、私はどちらかいえばデータ分析を中心に研究をしています。

自動車の位置情報から交通状況の異常を検知する

 具体的な研究例を2つ紹介しましょう。1つ目は、スマートシティ化や自動運転の実現に関わるデータ工学の課題として取り組んだもので、自動車の位置情報から交通状況の異常を検知するものです。多くのモニター車から刻々と送られてくる位置と時刻のデータを蓄積し、それを分析しました。これにより、例えば同じ渋滞でも、それがいつもの混雑によるものか、事故などの異常な状況かを見分けます。全交通量に比べればかなり少ないデータ数でしたが、日本道路交通情報センターの実際の事故状況と突き合せたところ、かなりの精度で検出できたことがわかりました。今後、さらに多くのデータを分析することで渋滞を引き起こすさまざまな要因の解明も可能になると思います。

道路インフラの劣化状況を把握する

 もう1つの例は道路インフラに関する研究です。近年、日本の多くの道路や橋で老朽化が進んでおり、いつ、どのタイミングでメンテナンスを行うかの判断は非常に重要です。現在は、専門家が現場の状況を検査して判断していますが、橋や道路にセンサーを取り付け、揺れやひずみをモニタリングし分析することにより、定量的な判断材料を提供することができます(図)。 研究紹介_高須先生_図.jpg  残念ながら今のセンシング技術では、インフラ構造物の劣化の状況を正確に把握することは実現できていません。けれどもこれまでに数十テラ(兆)バイトという非常に多くのデータが蓄積されましたので、今後、劣化の状況を機械学習させることにより、できるだけ早い段階で異常を検知することができるようにしていきたいと考えています。

複数のデータを関連づけるシステムを開発

 この研究の成果の一つは、複数のモニタリングを組み合わせて正確な現状把握ができたことです。車両の通行によるインフラへの負荷量は、かなりの精度で検出できました。例えば一つの橋に70個のセンサーを設置することで多面的に分析することが可能になりました。今回は加速度センサー、歪みセンサーや監視カメラ映像など、いろいろなデータを組み合わせて、橋にかかる負荷量を算出できるシステムを組みました。各種センサーデータを組み合わせて分析する際に鍵となるのが、各センサーで計測されたデータの対応づけです。もっとも基本的な対応づけは各センサーの時刻を同期させることですが、さらに、橋を通過する車両など橋に負荷をかけるイベントに基づいて計測データを柔軟に対応づける技術が必要になります。この研究ではハードウェアによる時刻同期からイベントにもとづいた計測データの対応づけアルゴリズムの開発までさまざまなレベルでの対応づけを可能にしました。

実空間とサイバー空間をつなぐために

 実空間で起こるさまざまな現象を観測することで得られるデータをサイバー空間(コンピュータ上)で解析結果し、サポートやアドバイスという形で実空間にフィードバックすることが最終目的ですが、精度の高いデータ解析や機械学習を実行するために、今後しばらくは、正確なデータの蓄積が必要です。一口に実空間といっても、計測する対象はさまざまです。多様な実空間の現象を計測したデータを管理・分析するためのシステム基盤技術(情報処理技術)を研究開発していきたいと考えています。


取材・構成 飯田 啓介

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