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医療ビッグデータクラウド基盤のAI自動診断研究への貢献で文部科学大臣表彰・科学技術賞(振興部門)を受賞
佐藤真一・合田憲人 NII教授、森健策 名古屋大教授、原田達也 東京大教授が共同受賞

 文部科学省が本日48日(金)に発表した「令和4年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰」において、「医療ビッグデータクラウド基盤(*1)AI自動診断研究への貢献」の業績により、佐藤さとう真一しんいち 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NIIエヌアイアイ)教授、合田あいだ憲人けんと NII教授、もり健策けんさく 東海国立大学機構 名古屋大学教授/NII客員教授、原田はらだ達也たつや 東京大学教授/NII客員教授よるグループが「科学技術賞(科学技術振興部門)(*2)」を受賞しました。

 佐藤教授らのチームは、医療画像のAI解析のため、世界に類例を見ない医療ビッグデータクラウド基盤を構築し、それをAI自動診断研究へ迅速に応用したのが評価され令和4年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰の科学技術賞(科学技術振興部門)を受賞しました。このクラウド基盤は日本全国の学術機関を高速大容量で結ぶ専用ネットワークであるSINET5(*3)VPN(*4)接続して構築したものです。

 全国的な専門医の偏在状況に少子高齢化が加わり、専門医療を受けられる機会の減少傾向が地方において顕著となっています。それにともない、遠隔医療などのICTによる医療支援の機運が高まってきました。特に、深層学習によって精度が飛躍的に高まった画像認識の技術を医療画像へ応用する動きは全世界で加速しています。しかし、今までの医療画像の解析は、単独の医療機関と画像解析研究者との一対一の枠組みで研究されることが大部分でした。

 それに対して、今回受賞となった「医療ビッグデータクラウド基盤のAI自動診断研究への貢献」の取り組みは、複数の診療科の学会を通じて全国の医療機関から医療画像を収集する仕組みを構築したのが特徴です。従来とは比較にならないほど大量の医療画像を迅速に収集する大規模な医療画像ビッグデータのデータベースを、情報漏洩なく匿名化して安全に扱えるクラウド基盤として実現したのがまず評価されました(図1)。

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〈図1〉医療ビッグデータクラウド基盤の仕組み

 そして、この医療画像ビッグデータは、実際のAI自動診断研究のために使われています。すでに、緑内障の自動診断(図2)や新型コロナウイルス感染症肺炎の自動診断(*5)(図3)の研究などで成果をあげています。このような実際のAI研究に迅速にビッグデータを提供し、研究に貢献している点も評価されました。

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〈図2〉眼底画像を診断するAIによる緑内障の自動診断の仕組み

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〈図3〉新型コロナウイルス感染症肺炎を自動分類するAIの診断結果の例

【令和4年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞 (科学技術振興部門) 】
医療ビッグデータクラウド基盤のAI自動診断研究への貢献

佐藤 真一(さとう・しんいち)

57歳

情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)コンテンツ科学研究系 教授

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合田 憲人(あいだ・けんと)

54歳

情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)アーキテクチャ科学研究系 教授

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森 健策(もり・けんさく)

52歳

東海国立大学機構 名古屋大学 大学院 情報学研究科 教授
情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)客員教授

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原田 達也(はらだ・たつや)

49歳

東京大学 先端科学技術研究センター 教授
情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)客員教授

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(年齢は本年4月1日現在)

業績概要:

 医療画像のAI解析のため、世界に類例を見ない医療ビッグデータクラウド基盤を構築した。クラウド基盤は日本全国の学術機関を高速大容量で結ぶ専用ネットワークSINET5とVPN接続した。

 専門医の偏在に少子高齢化が加わり、専門医療を受けられる機会が減少する傾向が地方において顕著となっており、遠隔医療などのICTによる医療支援の機運が高まり、特に深層学習によって精度が飛躍的に高まった画像認識の技術を医療画像へ応用する動きは全世界で加速した。医療画像の解析は、単独の医療機関と画像解析研究者との一対一の枠組みで研究が行われることが大部分であった。

 複数の診療科の学会を通じて全国の医療機関から医療画像を収集したことにより、従来とは比較にならないほど大規模な医療画像ビッグデータを実現した。

佐藤真一 NII教授(筆頭者)のコメント:

 このたびは、科学技術分野の文部科学大臣表彰(科学技術賞)という大変名誉ある賞を頂き、光栄に存じます。医学系研究者とAI画像解析研究者との緊密な連携に基づき、医療ビッグデータクラウド基盤を構築し、医学的にもAI画像解析的にも顕著な成果が達成できたことをご評価いただきました。今回の受賞は、申すまでもなく多くの方々のご支援・ご協力なくしてはあり得なかったものであり、特に医学系学会では日本医学放射線学会、日本消化器内視鏡学会、日本病理学会、日本眼科学会、日本超音波医学会、日本皮膚科学会、AI画像解析では東京大学、名古屋大学をはじめ、九州大学、奈良先端科学技術大学院大学他多くのご協力を頂きました。また、日本医療研究開発機構(AMED)には、研究立ち上げ時から様々なご支援を頂きました。関係されたすべての方々に心より感謝申し上げます。

関連リンク

NII医療ビッグデータ研究センター

ニュースリリース(PDF版)

医療ビッグデータクラウド基盤のAI自動診断研究への貢献で文部科学大臣表彰・科学技術賞(振興部門)を受賞
佐藤真一・合田憲人 NII教授、森健策 名古屋大教授、原田達也 東京大教授が共同受賞


(*1) 医療ビッグデータクラウド基盤:NIIが中心となって構築・運営している、匿名化した医療画像(眼底画像、CT画像等)を全国の病院から医学系の学会を通じて収集し蓄積しているデータベース。詳しくはNII医療ビッグデータ研究センターを参照 http://research.nii.ac.jp/rc4mb/
(*2) 科学技術賞(科学技術振興部門):大学等の研究開発成果を活用したベンチャー創出、地域における産学官連携、研究開発の社会的必要性に関する研究等の分野において、科学技術の振興に寄与する活動を行い、顕著な功績があったと認められる個人又はグループに贈られる賞。
(*3) SINET5:NII が構築・運⽤する学術研究専用の情報通信ネットワークで、⽇本全国の⼤学や研究機関などを超高速回線で接続し研究・教育活動を支えている。今までは全国の全都道府県を100Gbps回線で相互に結んでいたが、2022年4月1日より全国400Gbps回線のSINET6にアップグレードした。現在990以上の⼤学や研究機関などが加⼊しており、先進的なネットワーク利用環境を研究者や学生に提供している。
(*4) VPN:仮想閉域ネットワーク(Virtual Private Network)のことで、通信相手を特定したプライベートな専用回線であるかのように利用できる仮想的なネットワークサービス。
(*5) 新型コロナウイルス感染症肺炎の自動診断:詳しくは、2020年9月28日付ニュースリリース「新型コロナウイルス肺炎CT画像をAI解析するためのプラットフォームを開発〜全国の病院から集めたCT画像をAIで選別し高品質なAI研究用データセットとして整備〜」を参照 https://www.nii.ac.jp/news/release/2020/0928.html

※本発表は、 国立大学法人 東海国立大学機構 名古屋大学、 国立大学法人 東京大学 先端科学技術研究センター との共同発表です。
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