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ニュースリリース
研究情報基盤サービスresearchmapの研究開発で文部科学大臣表彰・科学技術賞(科学技術振興部門)を受賞
新井紀子・舛川竜治(NII)、宮下洋(ユニアデックス)が共同受賞
文部科学省が4月8日(金)に発表した「令和4年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰」において、「研究者の業績管理を効率化する研究情報基盤サービスの振興」の業績により、新井紀子 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII教授)、舛川竜治(NII特任研究員)、宮下洋( ユニアデックス株式会社)によるグループが「科学技術賞(科学技術振興部門)(*1)」を受賞しました。
新井教授らのチームは、日本の科学技術学術情報を機械可読な構造化された情報として、研究者・大学のみならず広く世界に発信するプラットフォームResearchmap(*2)を他国に先駆けて2009年に提供を開始しました。その後2011年に研究者情報登録の効率化による情報の有用性や利用者の利便性を向上するため、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が開発・提供してきたReaDと統合しresearchmapとして本格運用(*3)が始まりました。2022年4月現在、33万人を越える研究者に活用されています。2017年には、NIIが主導した人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」(*4)の世界史で高得点を達成することに貢献(*5)したユニアデックスの宮下洋氏を特任研究員として迎え、researchmapにAI機能(業績名寄せ、業績割り当て)を搭載したことを通じ、さらに研究者の業績管理を効率化したことで令和4年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰の科学技術賞(科学技術振興部門)を受賞しました。
researchmap: https://researchmap.jp/
国家の科学技術イノベーション戦略上、自国の研究業績を網羅的に集約することが不可欠であることが2000年以降広く世界で認識され、日本でも第2期科学技術基本計画(2001~2005年)において、研究者の業績評価システムの改革が言及されました。ただし、00年代には「機械可読性」が注目されておらず、各大学・機関等が異なる形式で重複して情報を収集する非効率が生まれたことから、研究者の多忙感が増大したことが問題となりました。また、手入力を前提としたため情報の欠損や誤りが多く、膨大なシステム・人的コストに比し、集約されたデータのメリットは小さく留まらざるをえませんでした。
それに対して、今回受賞となった「研究者の業績管理を効率化する研究情報基盤サービスの振興」の取り組みは、機械可読な状態に構造化された情報を、異なるシステムがアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)等を通じて共有する考え方や、研究者や研究業績にユニークなIDを付与することで業績名寄せや研究者名寄せ問題を解決する方式を活用し、海外の著名な書誌情報データベースから研究業績情報を取得したことが特長です。さらに、AIによる業績名寄せ、業績割り当てを開発・改良しながら、AIが苦手な意味理解を、研究者からの最小のフィードバックにより訂正することで補うという画期的なアイデアにより、人のみ・AIのみでは実現できない高精度の業績割り当て精度を達成しました。
〈図1〉researchmapシステムの概要
〈図2〉researchmapに搭載された「人-機械協働による」AI機能の仕組み
また、研究費補助金(JSPS)やJSTの各種競争的資金におけるresearchmapデータの利活用が広がっており、将来、科学技術政策のための科学の基盤データとなることが期待されています。第6期科学技術・イノベーション基本計画において「我が国の研究力を多角的に分析・評価するため、researchmap等を活用しつつ効率的に研究者に関する多様な情報を把握・解析する」旨が記載されました(*6)。
【令和4年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞 (科学技術振興部門) 】
研究者の業績管理を効率化する研究情報基盤サービスの振興
新井 紀子(あらい・のりこ) 59歳 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)情報社会相関研究系 教授 |
舛川 竜治(ますかわ・りゅうじ)() () 45歳 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)社会共有知研究センター 特任研究員 |
宮下 洋(みやした・ひろし) 48歳 ユニアデックス株式会社 DXビジネス創生本部 シニアデータサイエンティスト(2022年5月現在) |
(年齢は本年4月1日現在)
業績概要:
国家の科学技術イノベーション戦略上、研究業績の網羅的な集約が不可欠な事が世界的に認識されている。00 年代には機関個別の非効率な情報収集による研究者の負担増大や、手入力によるデータの欠損や誤りが問題視されたが、集約されたデータを異なるシステムがアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)等を通じて共有する考え方や、研究者や研究業績にユニークな ID を付与することで名寄せの問題を解決する方式が検討されつつあった。
本活動では、研究情報基盤サービス「researchmap」を開発し、2009 年に他国に先駆けて提供を開始した。研究者業績情報の正確かつ網羅的な集約を可能とし、研究機関や公的資金配分機関が利活用できる環境を整備した。業績情報について多様な書誌情報データベースからの取得を可能にすると共に、自動的に業績収集する AI を開発・搭載したことで、研究者の業績管理業務が効率化された。
本活動により、業績管理業務の効率化による研究者負担の軽減、大学・研究機関等による researchmap データを用いた自己分析、経営改善に活かすためのより高度な分析の実践に寄与している。
主要論文:
「Researchmap opening the door to the world of Science2.0」Proceedings of the 13th IASTED Conference on Computers and Advanced Technology in Education (CATE2010)、p161~171、2010年発表
「研究機関におけるReaD&Researchmapを利用した研究者総覧の構築について」情報の科学と技術、61(12)、p511~515、 2011年発表
新井紀子 NII教授(筆頭者)のコメント:
このたび、科学技術分野の文部科学大臣表彰(科学技術賞)という大変名誉ある賞を頂き、身に余る光栄と感じております。本受賞の対象となったresearchmapは、情報・システム研究機構(ROIS)が研究開発を、科学技術振興機構(JST)が運用を担い、研究者が自らデータを格納し、蓄積されたデータを大学や競争的資金配分機関等が活用する、という従来の縦割り役割分担を越えたScience2.0時代のプラットフォームです。そのresearchmapに33万人以上の研究者が参加して下さったことに、まず心より感謝申し上げます。また本プラットフォームを信頼し、既存システムから乗り換える決断をして下さった多くの大学の勇気と合理的精神を称え、改めて感謝申し上げます。今後も、運用主体であるJSTと緊密に連携しつつ、ユーザの皆様のお声を聞きながらresearchmapのさらなる充実に取り組んで参る所存です。今後ともご支援・ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。
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ニュースリリース(PDF版)
研究情報基盤サービスresearchmapの研究開発で文部科学大臣表彰・科学技術賞(科学技術振興部門)を受賞
新井紀子・舛川竜治(NII)、宮下洋(ユニアデックス)が共同受賞
(*2) Researchmap: 日本の研究者が共通して活用できる業績管理支援・共同研究支援プラットフォームとして、研究者に対し、①業績管理ができる研究者ホームページの提供、②共同研究用グループウェアの提供、③Web of Science, Scopus, PubMed, KAKEN, J-Global等多様な書誌情報データベースからワンクリックで自らの業績情報を正確に取得できるインタフェースの提供、により、研究者がresearchmapを利活用するインセンティブを設計し、短期間にユーザを獲得した。
(*3) ReaDと統合しresearchmapとして本格運用:2011年にRead&Researchmapとして統合し、2014年にresearchmapに改称した。
(*4) ロボットは東大に入れるか:NIIが中心となって1980年以降細分化された人工知能分野を再統合することで新たな地平を切り拓くことを目的に発足。2016年に日本の大学の7割以上に合格可能性80%以上(ベネッセ模試)と判定された。合格可能性80%以上の判定となった大学・学部・学科の中には、「MARCH」「関関同立」と総称される関東、関西の難関私立大学群の学部・学科も複数含まれた。「NII人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」/センター試験模試6科目で偏差値50以上」を参照: https://www.nii.ac.jp/news/release/2016/1114.html
(*5) プレスリリース「日本ユニシスがセンター試験模試「世界史B」で好成績/NII人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」を参照: https://www.nii.ac.jp/news/release/2015/1114-3.html (日本ユニシス株式会社は2022年4月にBIPROGY株式会社に商号変更しています)
(*6) 第6期科学技術・イノベーション基本計画:平成7年に制定された「科学技術基本法」に基づき、政府が長期的視野に立って体系的かつ一貫した科学技術政策を実行するための計画であり、第6期は、令和3年度から令和7年度までの5年間を対象としている。
※本発表は、 ユニアデックス株式会社 との共同発表です。
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