2020特別号

コロナ禍後の社会変化を見据えた新しい情報学キーパーソンとの対話

NII Today 特別号

Interview

コロナ時代の科学技術とICT

~Society 5.0 は何をめざすか

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は世界に大きな影響を及ぼしており、感染症の克服へ向けた科学技術の役割が問われている。社会経済活動を継続するため情報通信技術(ICT)の重要性も再認識された。COVID-19が突きつけた「新常態(ニューノーマル)」のなかで、科学技術やICTはどのような役割を果たせるのか。Society 5.0の方向性をどうすべきか。総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の上山隆大常勤議員とNIIの喜連川優所長が語り合った。

上山隆大

Takahiro Ueyama

総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)常勤議員/元政策研究大学院大学・副学長
1958年大阪生まれ。スタンフォード大学歴史学部大学院修了(Ph.D. )。上智大学経済学部教授・学部長、慶應義塾大学総合政策学部教授、政策研究大学院大学副学長を経て、2016年4月から現職。主な著書に『アカデミックキャピタリズムを超えて:アメリカの大学と科学研究の現在』(NTT出版、読売新聞社・吉野作造賞)などがある。専門は、科学技術政策、イノベーション政策、高等教育論。

喜連川 優

Masaru Kitsuregawa

国立情報学研究所 所長

久保田啓介

聞き手Keisuke Kubota

日本経済新聞社 編集委員
1987年早稲田大学理工学部卒業、日本経済新聞社に入社。科学技術、環境、防災などを取材し、2005年から編集委員。2009~2019年論説委員を兼務。阪神・淡路大震災記念「人と防災未来センター」で防災研究に従事し、現在、リサーチフェロー。

科学技術の重要性を認識させたコロナ禍

久保田 COVID-19の感染拡大は未曽有の事態になり、科学コミュニティもこれまでにない対応を迫られています。

上山 2月中旬、英国の主席科学顧問のパトリック・バランスさんから突然電話があり、その後もCOVID-19について意見交換しています。主要国には首脳に科学技術政策を助言する役職や組織があり、英国は主席科学顧問、米国ではホワイトハウスの科学技術政策局(OSTP)がそれに当たります。3月にはOSTPのケルビン・ドログマイヤー局長の呼びかけで日本を含む11カ国による電話協議が始まり、ほぼ毎週、これまで(7月中旬)に12回にわたり続いています。参加国も中国やロシアを除く17カ国に増えました。

こうした動きと並行して、COVID-19に関する査読前の論文の情報などをいち早く共有できたことはたいへん良かったと思っています。抗体検査を大規模に実施できるかどうかも各国共通の関心事でした。感染拡大でロックダウン(都市封鎖)を余儀なくされた国が多く、解除のシナリオを早く手に入れたいと考えているようでした。抗体をもつ人が増えれば社会経済活動を早く再開できる可能性があるからです。

COVID-19は科学の問題であるという共通認識もあり、どの国もリアクションは驚くほどよかった。ただ政治との関係となると難しい。ふだんでも科学者の専門知が政策に反映されているとは言いがたく、今後の対策でも科学が政治にどこまで関与できるか、不透明さもあります。

喜連川 1月から中国・武漢の情報を分析し、コロナ禍が日本で広がれば学術研究や教育が止まりかねないと心配していました。2月になると多くの学会が中止になり、私が会長を務める日本データベース学会などが予定していた研究集会「DEIM2020」もオンサイトでは中止を迫られました。私は「学生の貴重な卒業研究の発表機会を奪うべきではない。オンラインで学会を開けるのはIT屋しかいない」と呼びかけ、3月2~4日にオンライン開催にこぎ着けました。ほぼ例年並みの560人以上が参加し、IT屋の面目を保てました。

NIIでは、大学などの遠隔授業の取り組みを共有するサイバーシンポジウムを3月26日からほぼ毎週開き、大学や高専、高校などの事例や課題、教員や学生の反応などを報告してもらっています。そのなかで、多くの学校が遠隔授業を始めると、通信量が逼迫する恐れがあるとして「データダイエット」を呼びかけたところ、反響が大きく、現在、広くその考えを受け入れていただいているようです。コロナ禍においてNIIなりにできることを愚直に推進してきました。

不確実な感染症に科学・ICTはどう立ち向かうのか

久保田 COVID-19はウイルスの性質がなお不明なうえ、感染予測や制御も不確実です。科学技術の役割が問われています。

上山 一般の人には、科学というとドラえもんのポケットのようにどんな問題でも解いてくれるイメージがあります。しかし、COVID-19はわからない点が非常に多い。他方、問題を解いてくれるのは科学技術以外になく、その重要性が一般にも再認識されたように思います。科学技術研究にはおカネもかかり、リスクに備えるためには国家が相当の先行投資をする必要がある。今回、それが目の前にさらされて、その重要性が一般に広く理解されたのではないでしょうか。 NIIToday_2020sp_1-7.jpg

久保田 また、オンライン教育やオンライン診療の遅れ、特に行政のICT化の遅れが問題になり、デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が指摘されました。

喜連川 給付金ひとつとっても韓国はオンライン申請をしてすぐに受け取れるのに、日本ではかなり日数がかかったり、保健所からの情報収集にファクスが利用され、数が不正確になったりするなど、若干お粗末なところが散見されます。COVID-19への対応でも、どんな症状が重症化する傾向が高いかという、AI開発に必須なデータは我が国にもたくさんあるはずなのに、それらを一元的に集める場所がなく、混とんとしているように感じます。新しい感染症に立ち向かうにはデータが必須で、この状態は困ったことと感じています。

先日、NIIがオンラインで開催したオープンハウスの特別対談において、経団連の中西宏明会長と意見が一致したのですが、政府が掲げてきた「Society 5.0」はいまだ砂上の楼閣で、その基盤ができていないことがCOVID-19で露呈したのではないか、と。そもそも政府は、以前に「世界最先端IT国家創造宣言」を発出しましたが、実態が伴っているとは言えないように思われます。我々専門家から見ても、IT化は実際難しいのですが、少なくとも従来のやり方では十分機能しないことを認め、次の手を考える必要があると感じています。

"Society"のイメージは日本と西洋で異なる

久保田 Society 5.0は総合科学技術・イノベーション会議が5年前、第5期科学技術基本計画で提唱したものです。上山さんはCSTIの当事者としてどのようにお考えですか。

上山 Society 5.0は産業界から出てきたコンセプトで、コンセプト自体は悪くないと思っていました。それから5年が経ちましたが、実現できていないのではと言われたら、その通りでしょうね。私自身も第6期基本計画をつくっていくなかで、「まだ美しいお花畑のようなもの」と冷ややかな表現をしたら、さまざまな人から嫌な顔をされました。

ただし、それが実現できていないとすれば、その原因の一つは政府のシステムの問題です。有識者が提言しても、政府のなかでは実行されない。まず政府のくたびれたシステムを変えないといけない(笑)。

喜連川 そもそもSociety 5.0の定義がはっきりしません。サイバー空間とフィジカル(実)空間をつなぐと謳われていますが、その考え方を、米国ではサイバーフィジカルシステム(CPS)と呼んでおり、2006年頃から今日に至るまで膨大な研究資金が投下されてきています。したがって、それだけでは新鮮みはないと思います。日本の独自性、日本らしさはどこにあるとお考えでしょうか? ちなみに私はデータ駆動だと思っています。

上山 私は、Society 5.0という言葉を聞いた時に、ずいぶん日本的な表現だなという印象をもちました。欧州ではソサエティと表現するときには、それは発言している人間からみて「外に存在する」ものです。「社会」では貧富の差などいろいろな問題が起こるので、「改良すべき対象としての社会」という意味合いが根底にある。それに対し日本では、ソサエティには「共同体、コミュニティ、分かち合い、平等」といったイメージが埋め込まれている。この社会にいる限り同じ人間であり、同じ場所に生きているという感覚はきわめて日本的です。こういう人間中心主義のコンセプトを科学技術分野で扱い、基本計画の標題として選んだのは日本らしいと感じました。

ならばSociety 5.0 を社会観、世界観、価値観、生活観なりに昇華させて、世界に貢献したいんだと言えばよいのではと思っています。いま第6期基本計画をつくっていますが、そのような方向で考えています。

喜連川 デジタル化を推進していくという方向感自体は正しいと思います。ドイツが目標に掲げた"Industry 4.0"は産業しか見ていません。日本はそれをソサエティにまで広げた。そういう哲学的な整理はあってもよいでしょう。同時にデータ駆動型でサイバー空間と実空間の融合をめざす、という考え方をもっと明確にする必要もあります。2006年当初、米国で開催された全米科学財団(NSF)によるCPSの主責任研究者(PI)会合に出向いたことが思い出されますが、当時データ屋さんは誰も参加していませんでした。話題の中心は制御理論屋と計算機屋がどう歩み寄るかでした。少なくともデータ駆動型CPSという発想は当時はありませんでした。そこは新しい切り込みです。

ただ、CPSもSociety 5.0も、住環境、交通、医療、娯楽など、あらゆる分野のデジタル化をめざすもので、わずか5年程度で一挙にできるわけがありません。実際のシステム構築を少しでも行ったことがあれば、その難しさは容易に想像できます。技術的な側面を含めてSociety 5.0を丁寧に整理してみることも重要だと思います。ちなみに、米国のコンピュータサイエンス研究者でCPSを知らない人はまずいません。それくらい有名なキーワードです。だからなおさら、Society 5.0の整理が必要かと......。

転換期にある科学技術基本計画

久保田 いまの第5期科学技術基本計画は今年度で終わり、CSTIは第6期基本計画(2021~2025年度)づくりを進めています。

上山 現在、専門調査会で議論を進めていて7月1日に「検討の方向性」について案を示しました。来年2月の閣議決定をめざし、この夏から年末、年始にかけての議論で中身を詰めていく予定です。

1995年に「科学技術基本法」が制定され、それに基づいて1996年から第1期基本計画が始まりました。それから25年経ち、いまは仕切り直しの時期にあります。先の通常国会の最終日(6月17日)に、法律名を「科学技術・イノベーション基本法」に改める法案が成立して本当によかったと思っています。

改正前の基本法の精神は、国は科学技術の振興に責任をもち、予算を投入すべきということに尽きます。しかし、科学技術が社会に何をもたらすのかはっきりしません。そこで、我々がめざすのがイノベーションであることを明確にするために、法律に「イノベーション」という言葉を加えました。また、これまでの条文には、「人文系を除く科学技術」という表現がありました。制定当時は科学技術を法律で規定すること自体に反対論があり、人文系からも異論が出たためでしょうね。しかし、アカデミアは自然科学、社会科学、人文科学を含めた総合知であることははっきりしているので、今回、人文系を加えたのは当然のことと言えます。

第6期科学技術基本計画は行政システムの改革が柱に

久保田 新計画の目玉は何になりますか。

上山 何にするか、いま苦しんでいるところです。基本法ができた当時、日本は経済規模でまだ世界2位につけていましたから、このままでは競争力が先細りするとは想像しなかったでしょうね。むしろ、我が国が生きていくとすれば科学技術しかない、それを進行させる必要がある、という思いがあった。基本法づくりで尽力された尾身幸次先生(元科学技術政策担当相、財務相)はそれに挑んだわけです。いまは競争力がさらに低下し、日本はもう後がない土壇場まで追い込まれている。教育、行政、産業界のどこを見渡しても、新陳代謝が起きていません。この状況を変えないといけない。したがって、大学改革をはじめシステム改革が大きな議論の論点になりました。そこからさらにそれを越えて、第6期基本計画ではあらゆる意味での社会システムの改革、脱構築をめざしています。それこそが最大の柱になると思います。

なかでも政府のシステム、行政組織の改革は急務です。2000年の省庁再編から年月も経ちました。たとえばデータ庁をつくるというのは一案で、個人的にはシンクタンクが必要だと考えています。ただ、具体的にどこをどうするかは基本計画に書くことではない。具体化するのは政治、政権の役割です。

政策決定の仕組みも変えないといけない。米国では政権が変わると政策立案スタッフもがらりと入れ替わる。英国もコロナ禍のような問題が起きると、非常時科学諮問委員会(SAGE)のように、省庁のような組織をポンと設置して、外部の専門家が入ってきて政策をつくる。そうしたやり方はヒントになります。

喜連川 政策立案のブレイン(頭脳)機能の充実に加え、施策のモニタリングをきちんとやる仕組みを考える必要があると思います。政策ドキュメントはとても素晴らしく、間違っているわけではありません。ただ、ITというのは、絵図は比較的容易に描けるのですが、それをどう実現するかは、相当の手腕といいますか、経験のある専門家でないとわからないのが実情で、その点を心配する次第です。エビデンス(根拠)に基づく開発・運用が大切です。

ICTの主戦場はデータプラットフォーム

久保田 先ほども出ましたが、Society 5.0をどう見直すかも大きな課題ですね。

上山 第5期科学技術基本計画に書かれているようなSociety 5.0の実現が難しいことは、コロナ禍が起きてはっきりしました。しかし、Society 5.0の方向性は重要です。もう一度、定義し直して、実現可能な目標を世界に示すことが必要だと考えています。いま内部でさまざまな議論を行っている最中です。

喜連川 頑健なデータプラットフォームをつくることが日本にとって大きなチャレンジになります。2022年に、NIIは学術情報ネットワーク基盤「SINET5」を更新して、全国のアクセスポイントをすべて400Gbpsで結びますが、この超強力なネットワークに融合した形で、先進的なデータプラットフォームを構築する予定です。実験のデータをどこに蓄えようかと心配しなくてもすみ、簡単に使えるような、セキュアな巨大データプラットフォームを構築します。

研究だけでなく、たとえば、教育ではオンライン授業で集まる膨大なデータを蓄えて解析し、教育の質の向上に役立てたり、医療なら診断画像やレセプト(診療報酬明細書)のデータを蓄えてAIで解析し、診療支援や創薬に役立てたりするなど、あらゆる学問をデータ駆動化することを目標としています。より広く多くの研究者が気軽に活用できるようなデータプラットフォームが必要だと考えています。その姿は、英米を含め世界的にもいまだ不明瞭な状況であり、だから挑戦となるのです。

データのガバナンスをはっきりさせることも重要です。いまはデータの保有権がはっきりせず、研究者がデータをどう蓄え、処理してよいか困っている。ストレージを研究者ごと、あるいは大学ごとに買うととても高くつくので、NIIが見かけ上まとめて買えば大幅なコスト低減に繋がります。"学"だけのデータ基盤ではなく、暗号化によって企業も使いやすくする。企業からも「データを安全に預かってくれるプラットフォームを国がつくってくれるなら、そこにデータを出したい」という声が聞こえてきます。当然のことながら、企業においてもデータこそがもっとも重要な経営のアセットの一つと認識されつつあります。

第6期基本計画の検討資料に「セキュリティ」という言葉があまり出てこないのは気がかりです。データをガバナンスし、EDR(Endpoint Detection and Response:エンドポイントでの検出と対応)まで含めてセキュアに守ることが、いちばんの激戦区で、これからの主戦場になることははっきりしています。 NIIToday_2020sp_1-8.jpg

上山 ガバナンスとはレギュレーション(規則や規制)を変えることでもある。社会科学の立場からみると、技術革新よりレギュレーションを変えるほうが難しい。たとえば大学改革で会計基準を変えようとすると、その枠組みをつくった人たちが抵抗勢力になります。何かを変えようとすると、一つひとつ障害がある。第6期基本計画で掲げるシステム改革では、政府のガバナンスにまで切り込みたいと思っています。また、せっかく基本法の改定まで行ったのですから、我が国独自の価値観、倫理観、社会観を体現するようなSociety 5.0の新しい打ち出し方も考えていきたいと思っています。

COVID-19を機に国の研究投資拡大に期待

久保田 日本の研究力の低下も憂慮すべき状況にあります。第6期基本計画では科学技術の立て直しにどう取り組みますか。

上山 科学技術への国家投資が少ないことがそもそも問題でした。しかし、コロナ禍で状況が変わるでしょう。NSFが10兆円規模、欧州も科学技術に数十兆円の資金を投じると報じられています。安倍晋三総理も総合科学技術・イノベーション会議の本会議で投資増を表明しました。

喜連川所長がおっしゃったように、データ基盤の整備などでこれから大きな変化が起こるでしょう。世界との競争で勝ち抜ければ、アカデミアの最前線は活性化するだろうし、データ駆動型社会のインフラ整備も進む。10、20年後に、「コロナ禍をきっかけにアカデミアの再生が起きた」といわれるかもしれない。いまそうした空気感があります。

科学技術外交で国際社会の分断回避を

久保田 コロナへの対応で米中が対立を深め、世界経済のブロック化も懸念されます。日本社会でも分断の兆しが広がっています。分断回避に対して科学技術は何ができますか。

上山 新しい科学技術外交の方向性が重要だと思っています。これまでは「私たちがもつこんな技術を提供するから対話をしましょう」と、科学技術を外交の道具にしがちでした。しかし、いまは先端科学技術の動向、政策が外交の力と直結するようになってきている。これからデータ駆動型社会になり、データを握った国がパワーを握る。それがどの国になるのか。

オープンサイエンス(論文やデータの公開)についても、どの国がどういうプラットフォームを築いて覇権を握るのか、データ覇権をめぐる競争という視点で考えています。その競争はこれからの10年ほどで帰結し、新しい世界の秩序が見えてくる。そこに向けて日本がどんな外交戦略をとるべきか。ジオポリティクス(地政学)においても、科学技術はど真ん中にあると言えます。

COVID-19との闘いにICT活用のポートフォリオを

久保田 最後に、COVID-19との闘いは長期化が見込まれます。ICTはどのように貢献できますか? NIIToday_2020sp_1-9.jpg

喜連川 ICTで何をどこまでできるのか、さまざまな技術のポートフォリオ(最適な組み合わせ)を用意しておくことが大事です。厚生労働省がLINEの協力を得てスマートフォン利用者から膨大な体温データを集めましたが、7月下旬まで感染者が出ていなかった岩手県で利用者の平均体温がもっとも高いという、容易には理解できない結果が出ています。方法やデータの精査が必要かもしれません。手間はかかるけれども正確なやり方、コストはとても低いけれども正確性の担保は難しいやり方など、多様な手法を整理することが必要です。

感染者の接触検知アプリにしても、接触した際の姿勢やスマホをポケットに入れているといった影響を受けて、Bluetoothを介した信号電力が不安定になることは明らかになっています。台湾や韓国のように、感染が確認されるとスマホのデータから直前の行動を追跡するというフルトレース方式も、検討の余地はあります。個人情報の問題があり、日本で適用できるかは別問題ですが、感染規模が著しく深刻になる時点では国民の意識が変容するかもしれず、技術的に何がどこまでできるのかを詰めておく必要があるでしょう。IT屋的には「Fail Fast, Fail Smart, Fail Cheap」で臨む必要があると思っています。すなわち、いろいろやってみて経験値を蓄えておくことがとても重要です。

そして何よりも重要なことは、学問全般に言えることでしょうが、学生にまず基礎をしっかり学びましょうと言っています。基礎ができていないとその後の発展はとてもしんどいからです。ICTも同じで、しっかりしたデジタル基盤が肝です。

インタビュアーからのひとこと

 科学技術政策を取材してよく感じるのは、その政策がなぜ必要で、ゴールはどこか、評価指標は何かなど、行政担当者の説明が不十分なことだ。Society 5.0が提唱されたときもモヤモヤを感じたことを思い出す。5年たって「砂上の楼閣だった」という喜連川所長の指摘は腑に落ちた。上山議員が危機感をもつように、日本の科学技術は後のない崖っぷちに立たされている。第6期科学技術基本計画ではゴールを明確にし、行政も説明責任を果たしてほしい。

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